同棲の退去費用は、必ず折半する決まりがあるわけではありません。まず賃貸借契約の名義人や連帯保証人が誰かを確認し、次に、費用の原因が通常損耗か、故意・過失による傷や汚れかを分けて考えます。
二人の間で分けるときは、契約上の負担者を確認したうえで、原因を作った人が負担する費用、二人で使った部分を折半する費用、収入や契約時の合意に応じて分ける費用に整理すると、話し合いやすくなります。
退去費用は「すべて半分」ではない
退去時に請求される費用には、部屋の修繕費、ハウスクリーニング費用、鍵交換費用などが含まれることがあります。ただし、実際に請求される項目や金額は、賃貸借契約の特約、部屋の状態、入居期間などによって変わります。
賃貸借契約を結んでいるのが一人だけなら、貸主との契約上の責任は、原則としてその契約名義人が負います。二人の名前で契約している場合や、一方が連帯保証人になっている場合は、契約書に書かれた責任の範囲を確認する必要があります。
ただし、契約上の責任と、同棲相手同士で最終的に費用を分ける方法は別の問題です。たとえば契約名義人がいったん貸主へ支払った後、二人の合意に基づいて相手に一部を請求することはあります。
最初に分けるべき退去費用の種類
退去費用は、項目ごとに「誰が原因を作ったか」「二人で使ったものか」を確認してから分けます。
| 費用の種類 | 主な考え方 | 分け方の例 |
|---|---|---|
| 一人が付けた傷や汚れ | 原因を作った人の負担を基本にする | 本人が全額負担 |
| 二人で使った部屋の汚れや破損 | 原因を特定できない場合は共同負担と考えやすい | 折半、または合意した割合 |
| 契約で定められたクリーニング費用 | 有効な特約があるか、対象や金額を確認する | 折半、契約名義人負担など |
| 通常の使用による劣化 | 入居者の故意・過失によるものかを確認する | 入居者同士で分担しない場合がある |
| 鍵の紛失や無断での破損 | 原因を作った人が負担する | 本人が全額負担 |
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復について、借主の故意・過失や通常の使用を超える損耗・毀損を復旧する考え方が示されています。判断の際は、契約書の特約と部屋の実際の状態を合わせて確認します。
同棲の退去費用で使いやすい4つの分け方
1. 原因を作った人が負担する
壁に穴を開けた、家具を引きずって床を傷付けた、喫煙による汚れや臭いがあるなど、原因を特定できる場合は、原因を作った人が負担する方法です。
この方法は、負担の理由が明確になりやすい点がメリットです。一方で、どちらが原因か分からない汚れや、二人で使っていた設備の故障には、そのまま適用できません。
2. 二人で使った部分は折半する
リビングやキッチンなど、二人で共同して使っていた場所の費用は、折半する方法があります。原因を一人に決められない場合にも使いやすい分け方です。
ただし、折半はあくまで話し合いによる方法です。一人だけが使っていた部屋の汚れや、特定の人の不注意で生じた破損まで、機械的に半分にする必要はありません。
3. 収入や支払い割合に応じて分ける
家賃や生活費を普段から収入割合で分けていた場合は、退去費用も同じ割合にする方法があります。たとえば、家賃を二人で6対4に分けていたなら、共同使用部分の退去費用も6対4にする考え方です。
この方法が向くのは、二人が入居時から同じルールで生活費を分担していたケースです。退去時になって初めて収入差を持ち出すと、相手の合意を得にくいことがあるため、契約書やメッセージなどで事前の合意を確認します。
4. 敷金や立替払いを調整して精算する
退去費用の請求額だけでなく、誰が敷金を支払ったか、誰が退去費用を立て替えたかも含めて精算します。敷金が返還される場合は、返還額も二人の負担割合に応じて分ける必要があります。
たとえば、二人で折半する合意があるのに、一人だけが退去費用を全額立て替えた場合は、相手の負担分を後から精算します。敷金を一人だけが出していた場合は、敷金の返還分を当然に折半するとは限らないため、入居時の負担状況を確認します。
迷ったときの基本的な分け方
事前の合意がなく、原因もはっきりしない場合は、次の順番で判断すると整理しやすくなります。
- 契約書で、退去時のクリーニング費用や修繕費用に関する特約を確認する。
- 貸主や管理会社から受け取った明細を、項目ごとに分ける。
- 通常の使用による劣化、二人で使った部分、一人だけの行為による破損に分類する。
- 一人だけの行為による費用は原因を作った人が負担する。
- 二人で使った部分や原因を特定できない部分は、折半または普段の生活費の割合で分ける。
- 敷金の返還額と、どちらが立て替えたかを加えて最終的な精算額を計算する。
- 計算結果をメッセージや精算書に残し、支払日と振込方法を決める。
費用の明細がない場合は、まず貸主や管理会社に、請求項目、数量、単価、修繕箇所、借主負担とする理由を確認します。金額だけを見て、すぐに折半額を決めないことが大切です。
計算例:共同部分と個人の破損を分ける場合
以下は、分け方を説明するための仮定例です。実際の請求額や負担割合を示すものではありません。
- 共同使用部分のクリーニング費用:4万円
- 一人が壊した室内設備の修理費:3万円
- 敷金の返還額:1万円
共同部分を折半し、設備の修理費は原因を作った人が負担すると合意した場合、共同部分の負担は一人2万円ずつです。修理費を負担する人は、2万円に3万円を加えた5万円を負担します。
敷金1万円を二人の共同負担部分に充てたものとして折半するなら、最終的な負担額は、修理費を負担する人が4万5,000円、もう一人が1万5,000円となります。実際には、敷金を誰が支払ったかや、返還額の対象となった費用によって計算が変わります。
契約書で確認するポイント
退去費用の分け方を決める前に、次の項目を確認してください。
- 賃貸借契約の名義人は誰か
- 連帯保証人や保証会社の契約者は誰か
- 二人の同居が契約上認められているか
- 退去時のハウスクリーニング特約があるか
- 特約に費用、対象範囲、適用条件が書かれているか
- 敷金や保証金を誰がいくら支払ったか
- 入居時の傷や汚れを記録した写真があるか
契約書に「退去時は借主が修繕費を負担する」と書かれていても、すべての損傷について無条件に負担するという意味になるとは限りません。特約の内容や説明の有無、費用の範囲などによって判断が分かれるため、請求内容に疑問がある場合は明細と契約条項を照らし合わせます。
別れて退去する場合は、精算方法を先に決める
同棲を解消して一人だけが住み続ける場合は、退去しない人が費用を負担するのか、二人で入居期間中の損耗を分けるのかを話し合います。契約名義人が退去する場合は、名義変更や新たな契約が必要になることもあるため、貸主や管理会社への確認が必要です。
話し合いでは、退去費用だけでなく、次の金銭も一緒に整理します。
- 敷金や保証金の返還額
- 家具や家電の売却・引き取り費用
- 引っ越し費用
- 未払いの家賃や光熱費
- 退去後に発生した修繕費
退去後に追加請求が発生する可能性がある場合は、「追加請求が来たときはどの項目をどの割合で負担するか」も、メッセージなどで残しておくとトラブルを減らせます。
退去費用の請求に納得できないとき
請求額に納得できない場合でも、相手に連絡せず支払いを止めるのではなく、まず明細と契約書を確認します。通常の使用による劣化と考えられる項目、入居前からあった傷、修繕範囲が広すぎると考えられる項目は、写真や入居時の記録を示して確認を求めます。
貸主や管理会社との話し合いで解決しない場合は、消費生活センターなどに相談する方法があります。相談時には、賃貸借契約書、退去時の精算書、部屋の写真、管理会社とのやり取りを用意します。
同棲の退去費用を分けるときの結論
同棲の退去費用は、契約上の責任者を確認したうえで、費用の原因に応じて分けるのが基本です。一人の破損は原因を作った人、二人で使った部分は折半または合意した割合、敷金や立替金は実際の支払いを含めて精算します。
まずは契約書と退去費用の明細を用意し、項目ごとに「個人負担」「共同負担」「契約内容の確認が必要」に分類してください。そのうえで、最終的な負担額と追加請求時の扱いを、記録に残る形で合意することが重要です。







